大分春らしい陽気になってきましたね。生垣のツツジも大分咲き揃い、藤の花も咲き始め春本番の気配を感じる今日この頃です。今年は冬が寒かった反動か、桜を始め春の花々は早く咲き始める傾向にあるようです。
春と言えば1年ほど前に、某ラジオ番組でパーソナリティーをしていた宇多丸(ラッパー)が熱く語っていたことを思い出すのですが、その時のテーマは“3月は本当に春なのか?”というものでした。
宇多丸の主張では・・・『3月になると“春めいてきましたね”とか“もう春ですね”という時節の挨拶をする人が多いのですが、とんでもない!3月の始めはまだ外を歩く人はマフラーや手袋をして震えながら歩いているし、雪だって降ることもある。確かに後半には桜の花が咲くけれど花見の頃は大概花冷えで、みんな寒くて震えながら花見をしているではないか!これが春であるはずがない!どう考えても3月は冬に決まっている!!』と、かなり語気を荒くして語っていたのです。
ただ単に宇多丸が寒がりだからと言ってしまえばそれまでなのですが、確かに春はいつからかと言われるとかなり難しい設問だと思います。そこで春の始まりについて考えてみることにしました。
我々が1年で最初に春を表現するのは元旦で、年賀状に賀春とか迎春のような言葉を使い1年の門出を祝うのですが、これはあくまでも形式的なもので正月が春だと思っている人は誰もいないと思います。
次に春という言葉を口にするのは二十四節季に基づく暦の上での春、即ち立春(2/4)になります。時節の挨拶では立春以降立夏までは春の用語を用いることになります。俳句の季語もこれに倣っております。ただ、そろそろ早咲きの梅の花の咲く時期とはいってもまだ寒く、体感的にはとても春には程遠いと言えます。
次の春は気象庁で定義されている3月からの春になります。気象庁では3~5月を春、6~8月を夏、9~11月を秋、12~2月を冬と定義しており、天気予報でもこの季節表示が使用されております。宇多丸の言っている3月は春か?というのはこれに対しての反論だと思います。確かに3月でも前半は真冬のように寒い日も多く、三月一日をもって春と断言するのはどうかという気もします。
次の春は天文学上の定義で、春分の日(3/21)~夏至までを春とするものです。ちょうど桜の花も咲く頃で、体感的にもそろそろ暖かくなって春物の服に替えるのもこの頃ではないかと思います。欧米ではこの季節区分が採用されているようですが、日本では定着していないようです。
もう一つの春は人為的に決められた春で4月~6月を春とするものです。学校の学期やテレビの番組などではこの季節区分が採用されております。
一口に春と言っても2か月近いズレがあり、春と言われたらどの春?と確認する必要があるかもしれません。宇多丸の主張も分からないでもないですが、いろいろな春があるのも日本らしくて良いのではと感じます。
そんな宇多丸ですがどうしても白黒はっきりさせたいらしく、国民投票で決めよう!と言い出して自分の番組の中で国民投票をすることにしたようです。国民投票とはいってもリスナーの一部だけの参加で何の影響力もないのですが・・・。ちなみに投票の結果は6:4で“3月は春でない説”が多く、宇多丸の勝利となり、想像に難くなく宇多丸はそれ見たことかと吠えまくり、春の嵐のように吹き荒れて幕を閉じた一件でした。
研究開発部 橘田